研究室での生活
まず、研究室に配属された学生から博士課程の学生までの、私たちの研究室における一般的な生活を示します。
研究室ゼミ
毎週月曜日13:00から2〜3時間程度のゼミを行います。発表者は一回につき1〜2名で、基本的には、発表前にじっくり
練り上げられた題目について、じっくりと議論します。研究室内の連絡会議も同時に行うので、研究室成員は参加必須です。
個人面談
毎日11:00〜12:00に教授による個人面談(毎回対象1人)を行います。前もって研究室成員の面談スケジュールを決めます。
教授は、個人面談を最重要・最優先の仕事として位置付けていますので、研究室成員は、このスケジュールを厳守しなければなりません。
輪読会
適宜、研究室で必読とされる教科書の輪読会を行います。基本的には、学生主導でグループとスケジュールを決めます。推薦教科書は以下の4冊です。
・『生物環境物理学の基礎 第2版』久米篤・大槻恭一・熊谷朝臣・小川滋/監訳(Campbell, G. S. and Norman, J. M./原著),森北出版
・『植物と微気象 第3版』 久米篤・大政謙次/監訳(Jones, H. G./原著),森北出版
・『水文学』杉田倫明/訳(Brutsaert, W./原著),共立出版
・『水環境の気象学―地表面の水収支・熱収支―』近藤純正/編著,朝倉書店
講義
学部学生はもちろん、大学院から入学してきた学生まで、学部講義の「生物環境物理学」、「森林水文学」、「砂防工学」の聴講は必須です。
これらの講義中で教えられることは研究室内の常識であり、知らないことがあるということは許されません。
以下は、各ステージでの注意すべき点です。
私たちの研究室で卒業論文/修士論文/博士論文を書くためには
研究室配属〜卒業論文
研究室への配属が決まるのは、3年生の10月から11月にかけての頃です。自分の椅子・机・パソコンが与えられて本格的に
研究室に出入りを始めるのは4年生の4月となりますが、私たちの研究室に配属が決まった段階で、基礎科学の勉強を始めてもらいます。
詳しくは、こちらの“ミニマム・リクワイアメント”をご覧ください。
個人面談が始まって、何度かの議論の後、卒業論文のテーマを決めます。テーマの決め方には幾つかのルールがあります:
1.フィールド調査や観測を主体とするテーマは選ばない。もちろん、先輩学生や教員のフィールド調査に手伝いを頼まれ、
本人が行きたいのならば、それを制限することはありません。
2.基本的には、理論系のテーマとなります。理論系とは、例えば、(1)興味ある自然現象の数理モデルの構築、
(2)その数理モデルを解くための数値計算技術の洗練化、(3)興味のある自然現象に関する文献精査を基にする
レビュー研究、(4)計測センサーの開発、(5)仮説検証を前提とした室内実験や(6)そのための
実験装置の開発、などになるでしょう。
3.必ず、学術雑誌への投稿論文になり得るテーマを選びます。もちろん、学生の側からテーマを提案して、それがこの条件を満たすならば、
そのテーマが採択されますが、基本的には、経験の浅い学生の提案が通ることは、ほとんどあり得ないでしょう。基本的には、教員の提案するテーマの研究を
行ってもらいます。ただ、ここで強調しますが、テーマはあくまで教員と学生との間の議論で決まるものです。一方的に教員から押し付けるような
ことは絶対にありません。
4.つまり、卒業論文は、必ず学術雑誌への投稿論文という形に仕上げることになります。大学院に進学する学生は修士1年の間に投稿する
ことになるでしょう。学部で卒業する学生の論文は、教員が投稿することになります。いずれにしても、経験の浅い学部学生が自力で学術誌への投稿論文を仕上げることは、
ほとんど不可能でしょう。学術誌への論文投稿に関しては、教員が全面的に責任を負うことになります。なお、大学院へ進学する学生の場合、第一著者は絶対にその学生になります。
大学院入学〜修士論文
修士1年は、基礎科学の勉強をする人生で最大・最後のチャンスではないかと思います。
詳しくは、こちらの“ミニマム・リクワイアメント”をご覧ください。
また、コンピュータ言語・プログラミングや様々な観測機器の取り扱いなどの習熟を奨励します。
この段階で既に博士課程への進学を考えている学生には、修士1年の間での学術論文の投稿を特に勧めます。修士2年の5月までに受理された学術論文があれば、
博士課程からの日本学術振興会特別研究員に採用される可能性が格段に高まるからです。
個人面談での何度かの議論の後、修士論文のテーマを決めます。修士論文ではフィールド調査や観測を主体とするテーマも選ぶことができます。
卒業論文と比べると、学生の側から提案されたテーマが採択される可能性は高くなりますが、修士論文のテーマの大前提は、ここでも、
必ず学術雑誌への投稿論文になり得る、ということですので、この大前提のためには、教員の提案するテーマで研究を行わなければならない場合が多くならざるを得ないでしょう。
ここでも強調しますが、テーマはあくまで教員と学生との間の議論で決まるものです。一方的に教員から押し付けるようなことは絶対にありません。
修士論文も、必ず学術雑誌への投稿論文という形に仕上げることになります。博士課程に進学する学生は博士1年の間に投稿することになるでしょう。
修士で修了する学生の論文は、教員が投稿することになります。
いずれにしても、僅かばかりの経験を積んだ程度の修士学生が自力で学術誌への投稿論文を仕上げることは、
あまりありません。学術誌への論文投稿に関しては、ここでも教員が全面的に責任を負うことになります。なお、博士課程へ進学する学生の場合、第一著者は絶対にその学生になります。
博士課程進学〜博士論文
博士課程まで進んできた皆さんは、間違いなく職業研究者の卵です。皆さんにはプロフェッショナルとなる強い意欲を持ってもらわなければいけません。
また、教員側も、世界に通用する研究者を育てるんだという、より強い意気込みで指導に臨みます。
私たちの研究室では、学生を、学位取得後、数年のポスドク(海外に出ることを強く推奨します)の後、林学・砂防分野だけでなく工学部や理学部の
関連分野での教員公募にも勝てるように育てることを目標としています。
そのため、私たちの研究室では、賛否両論があるのは承知の上で、学位取得の基準にトムソン・ロイターのデータから算出されるインパクトファクターを利用します。
すなわち、学位取得の要件として、第一著者として論文が掲載された雑誌のインパクトファクターの合計値が5を超える必要があります。
なお、論文博士で学位を取得しようとする方は、10を超える必要があります。
例えば、Journal of Forest Research(2017年現在で0.667)だけで論文を掲載させた場合、8本の主著論文が必要となります。
Agricultural and Forest Meteorology(2017年現在で3.887)ならば、これと、あと1本、Ecological Research(2017年現在で1.283)に論文を掲載させれば合計で
5を超えることになります。
最後にもう一度言わせてください。一旦、道を志して私たちの研究室に参加してきたなら、私たちは、世界を獲るべく、常にあなたと共に
あります。そして、私たちの研究室は、“科学者の楽園”でありたいと常に願っています。
ミチノタメキタレ(楠正位)
2017年8月1日
熊谷 朝臣 記
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